パプリカ×kodomo 1
ピーマンとパプリカは、とても姿形が似ています。
なんとなく緑色をしているのがピーマンで、カラフルなのがパプリカというイメージですよね。
実はピーマンもパプリカも分類上唐辛子の仲間に属しています。
苦くないピーマンというよりは、辛くない唐辛子と行った方が、ぴったりと来るかもしれません。
『身近な野菜の奇妙な話』(森 昭彦 著)の中で、著者はピーマンとパプリカが生まれた経緯を次のように述べています。
「15世紀末大航海時代、コロンブス一行がヨーロッパへ胡椒を求めて新大陸に辿り着くも、どうやっても見つからず、代わりにトウガラシを持ち帰る。火を噴くような辛さにヨーロッパ社会は驚いたが、好奇心の権化である植物屋どもは、さっそく洗練された農芸技術を駆使して、あまり辛くないトウガラシをもとにピーマンとパプリカを生み出した。」
では、ピーマンとパプリカが同じ分類の野菜であることは分かりましたが、違いはどこにあるのでしょうか?
パプリカといえば、赤や黄色などカラフルですよね。一方ピーマンは?
実は、ピーマンも完熟すると、赤や黄色になります。
ピーマンが緑色しているのは、未熟果を収穫しているためなのです。
それとは逆に、パプリカは完熟したものを収穫しています。
ピーマンと同じように、未熟果の段階ではパプリカも緑色をしています。
「パプリカ、カラーピーマン、ピーマンとあるが、その違いを知る人は少ない。パプリカは、カラーピーマンの一種で果肉が厚く大型になる品種。カラーピーマンはピーマンが完熟したもの。とどのつまり基本的には一緒で、品種と収穫期が違うだけである。」
『身近な野菜の奇妙な話』(森 昭彦 著)
ピーマンとパプリカは収穫期と大きさに違いがあったんですね。
成熟した状態で収穫するパプリカは、未熟な状態で収穫するピーマンに比べ、豊富な栄養素が含まれています。
ビタミンC、カルテノイド類が、未熟果の3倍にもなるようです。
また、赤い色素であるカプサンチンやカプソルビンは、抗酸化作用、抗がん作用、抗炎症作用があり、近年では、善玉コレステロールの血中濃度を上げる働きが注目を集めています。
パプリカのような、鮮やかな赤や黄色、オレンジ色は、まるで果物みたいです。
実際、植物学的には、パプリカは果実に含まれるようです。
(この分類によれば、一般的には野菜として知られているトマトやナス、ピーマン、キュウリなども、植物学的には果実に含まれます。)
『マギーキッチンサイエンス』(Harold McGee 著)には、果実の定義や特徴について、次のように記述されています。
「17世紀以降の植物学的な定義では、果実とは花の子房が発達した器官のことで、種子をとりまく部分のみをさす。[・・・・]
果実は、食べられることを目的とする数少ない食物の一つである。多くの植物は、動物の嗜好に合うように果実を作り出したわけで、動物が果実を食べることで果実中の種子が遠くへ広まることが目的である。」
移動できない植物は、自ら移動可能な動物に食べられることで、種子を遠くへ運びます。十分に成熟した種子を動物に食べてもらうため、色や硬さや味を変化させていきます。
パプリカのカラフルさは、動物にいいタイミングで見つけてもらうためのサインだったんですね。
パプリカは、カラフルになることによって、動物に見つけてもらうためのサインを発していましたが、我々動物の側もそれを見つけられるように進化してきたという歴史があるようです。
『マギーキッチンサイエンス』(Harold McGee 著)には、
私たち人間が、絵画など多彩な色彩を楽しめているのは、果実や葉の色彩を識別することから身についたのだと述べています。
我々人間の祖先にとって、栄養価の高い果実は、生存するための重要な食料でした。
彼らは森の緑の中で、果実を見つけ出せるよう、果実に含まれるカロテノイドやアントシアニンの発する黄色〜橙色〜赤色の色彩を識別できるようになっていったのだといいます。
私たちが、絵画やデザインなど、色彩を楽しめているのが、果実を見分ける能力が発端というのは、大変興味深いですね。
人間の眼の進化について、『我々は人間なのか?』(ビアトリス コロミーナ, マーク ウィグリー 著)の中で、著者は次のように述べています。
「ダーウィンの例のひとつによれば、人間の眼は数百万もの間の、数百万もの微小な要素の、数百万もの微小な変化の産物なのである。原始生命体だった頃の色素に覆われた単純な神経から、人間の要求に合わせて完璧に調整される高度な「生きた光学機器」になるまでの、極めて長く、そして今も続く歴史がある。」
生き残るために我々人間の眼は、周囲環境との相互作用で、進化を遂げました。
そしてその進化は今も続いています。
パプリカのカラフルな色を綺麗だと感じることは、
私たちが生存していく過程で身につけた技術だったんですね。
tsutsu farm
所在地: 安芸高田市向原町
instagram: @tsutsu_farm
tsutsu farmは、
向原町にて、西洋野菜や伝統野菜を栽培しています。
農薬/化学肥料は使わず、
不耕起栽培や無肥料での栽培等、
実験的に栽培法を取り入れ、生産しています。
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